書影

小説を読む、というより

作品を鑑賞するという読み方が正しいかも。

表現全てを解読しようとすると、難解過ぎる。

でも草間さんの感性や表現に触れるには、とても楽しい本。

感想

本書の感想です。

各話毎にまとめています。

クリストファー男娼窟

麻薬に溺れる男性。

お金のために男娼の仕事をする。

お金のため、と言い訳をしても心の奥底では嫌気が差している。

性欲と青春、肉体の若さを欲し、男娼を求める初老男性。

麻薬によって幻覚を見た際に出てきたのは

やはり「水玉模様」。

草間彌生さんの定番の表現で、
生命や自己消失を表している。

主人公は幻覚の中で自己の世界が別のものに作り替えられ、消失していく様子を見る。

慄き嫌気がさした主人公は、自分を買った相手を殺害してしまう…

事件はすぐに発覚。

主人公の男性は(恐らく)バルコニーから身投げをする…

最後の身投げシーンの心理描写がよく分からなかった。

汚い世界と自分に嫌気がさし、自死を選んだのかな?

離人カーテンの囚人

  • ヒステリックな母親
  • 離人幻覚の中の自己喪失
  • 幻覚から逃れるために絵を描く

読み進めてすぐに
これは草間彌生さんの幼少期の実体験を基にしているな
とピンと来る。

家庭環境が良くなかったとは知っていたがこれ程壮絶なものとは…

毎日のように折檻され、浮気する父親の後をつける。

両親は絶えず喧嘩をしている…

汽車に飛び込んで自殺したいと思う日々…

第一章よりも比喩表現がより難解になる。

でもこれは創作ではなく、幼き草間さんが本当に体験した現象。

樹木の黒々とした塊が襲いかかってくる

黒々とした大海の中で溺れる自分

読んでいるこっちも頭がおかしくなりそう。

「生まれて来なければよかった」

「セックスは汚いもの」

「快楽の代償で生まれてきてしまった自分」

そう教えられて育ってきた草間さんが、セックスを忌避するのも理解できる。

そして「ハプニング」という手法で性を解放しようとしたのも頷ける。

どこまでが事実?

草間家はヤクザに乗っ取られ、家は堕落していく。

キーコ(弥生さん)は大人への嫌悪を募らせ、救いを死へと見出していく。

どこまでが事実?

自伝本の「無限の網」では、父親が資金援助をしてくれていた

と書いてあったから家がヤクザに乗っ取られたというのは創作かな?

物語の最後にキーコは汽車の前に身を投げ、自殺してしまう。

もちろんこれは創作だけど、事実になり得た可能性が高かったと考えると恐ろしい。

本当の草間さんは芸術活動に救いを見出し、何とか踏みとどまる。

もしも草間さんが絵を描くことをしていなかったら?

きっとこの物語が事実になっていたのだろう。

死臭アカシア

亡くなった妻と性交し続ける画家。

美を追求するも手に入らず、やっと手に入れたと思ったらまた失ってしまう。

次は草間さんのどんな実体験の話だろう、とワクワクしていたら面食らった。

何だこの話?

いつにも増して表現が難解。

まさか実体験ではないだろうけど。

でも小児麻痺の弟の面倒を見る、というのは草間さんのかつての恋人に当てはまるような。

アカシアという花について詳しく知ったら理解できるかな?

と思って調べてみた。

アカシアの花言葉は

「秘密の恋」、「気まぐれな恋」。

だめだ、分からん…

また少し時間を空けて、読んでみたい作品。

全体の感想

この本は草間さんが見てきた世界と自己心理が合わさった作品なのだと思う。

表現は難解だけど、洗練されていて美しい。

前衛芸術家である一方で、作家としてもレベルが高い。

改めて芸術家としての才能に驚愕。

他の作品も読んでみよう。

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